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福岡地方裁判所 昭和52年(ワ)1054号 判決 1979年5月17日

原告 国

右指定代理人 武田正彦

<ほか三名>

被告 株式会社 西広

右代表者代表取締役 正木敬造

右訴訟代理人弁護士 敷地隆光

主文

被告は原告に対し金二一六万一〇二二円及び別紙債権目録中「認容額」欄記載の各金員に対する同目録中「支払年月日」欄記載の各支払日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを三分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し金三〇八万七一七四円及び別紙債権目録中「支払額」欄記載の各金員に対する「支払年月日」欄記載の各支払日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  第1項につき仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

昭和四九年九月四日午後二時五五分ころ、福岡市博多区博多駅中央街一番一三号先の博多駅交差点で、訴外山口強志運転の軽四輪乗用自動車(八八福岡あ六二八四号、以下「加害車両」という。)が訴外広渡友則(以下「被害者」という。)運転の軽四輪貨物自動車(六六福岡い二九八三号、以下「被害車両」という。)に追突し、被害者が全治三二〇日間を要する頸椎捻挫、腰部挫傷等の傷害を負った。

2  責任原因

被告は、加害車両を所有し、これを自己のために運行の用に供していた。

よって、被告は、自賠法三条により、本件事故によって生じた被害者の損害を賠償する責任がある。

3  損害

(一) 治療費   二五六万六六八〇円

被害者は、前記傷害の治療のため治療費二五六万六六八〇円を要し、同額の損害を受けた。

(二) 休業損害  一三二万〇四九四円

被害者は、国家公務員(博多東郵便局第二集配課郵政事務官)であるが、前記傷害の治療に伴い、昭和四九年九月四日から昭和五〇年六月三日(但し、同年五月一日から六日までの六日間を除く。)まで休業した。その間に被害者が得べかりし給与の額は、別紙債権目録番号1の「支払額」欄記載のとおり合計一三二万〇四九四円であり、被害者は、同額の損害を受けた。

(三) 損害の填補

右治療費二五六万六六八〇円のうち八〇万円は、自賠責保険金の給付により填補された。

4  損害補償

(一) 療養補償

本件事故は、被害者の公務執行中に発生したため、原告は被害者に対し、国家公務員災害補償法一〇条の規定により、療養補償として前記治療費の残額一七六万六六八〇円を別紙債権目録番号2の「支払額」欄記載のとおり支給した。

よって、原告は、同法六条一項の規定により、被害者が被告に対して有する損害賠償請求権を右給付額の限度で取得した。

(二) 給与補償

原告は被害者に対し、公共企業体等労働関係法八条による郵政省と全逓信労働組合等間で定められた「特別休暇等に関する協約」二条及び四条二項の規定に基づき、別紙債権目録番号1の「支払額」欄記載の俸給等を給付した。

よって、原告は、民法四二二条の類推適用により、被害者が被告に対して有する損害賠償請求権を右給付額の限度で取得した。

5  結論

以上の理由により、原告は被告に対し、損害賠償金三〇八万七一七四円及び別紙債権目録中「支払額」欄記載の各金員に対する「支払年月日」欄記載の各支払日の翌日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する答弁

1(事故の発生)は認める。但し、傷害の部位程度は争う。

2(責任原因)は認める。

3(損害)の(一)ないし(三)はいずれも不知。

4(損害補償)の(一)、(二)はいずれも不知。

三  抗弁

原告は、昭和四五年七月一六日にも交通事故(以下「第一事故」という。)にあっており、本件事故発生当時第一事故による傷害の治療継続中であった。しかも、受傷部位(頸部及び腰部)は同一であり、愁訴も従前のものと同様である。

本件事故の衝撃は、極く軽微であって、被害車両の修理費は二万一六六〇円を要したにすぎず、このような軽微な接触によって、約一年間の長期入通院を要し、しかも一四級に該当する後遺障害を残すような外傷が発生することは、他の要因が作用しない限り、通常起り得ないことである。

よって、被害者の損害を算定するについて右の点を考慮すべきである。

四  抗弁に対する答弁

被害者が第一事故に遭遇して傷害を負ったこと、本件事故による被害車両の修理費が二万一六六〇円であったことは認めるが、その余は争う。

被害者の第一事故による傷害は、昭和四七年九月三〇日までの治療によって一応治ゆし、本件事故当時既に症状が固定していたものである。また、本件事故の衝撃は、決して軽微なものではなく、そのことは、加害車両の修理費が九万四一七〇円であったこと、右車両の運転手山口は、考え事をしながら時速約四〇キロメートルで進行中、前方約五・五メートル地点に停止している被害車両を発見し、急ブレーキをかけたが間に合わず、被害車両に追突し、約一メートル進行してようやく停止したことなどの諸事情に照し、明白である。

従って、仮に第一事故による傷害が被害者の本件事故による損害に寄与しているとしても、その程度は、極くわずかなものにすぎないというべきである。

第三証拠関係《省略》

理由

一  事故の発生

請求原因1記載の事実は、傷害の部位程度を除いて、当事者間に争いがなく、《証拠省略》によると、被害者は、右事故により頸椎捻挫及び腰部挫傷の傷害を負い、その治療のため昭和四九年九月四日から昭和五〇年二月一八日まで松田整形外科医院に入院し、翌二月一九日から同年九月二〇日まで同医院に通院したことが認められる。

二  責任原因

請求原因2記載の事実は、当事者間に争いがない。

よって、被告は、自賠法三条により、本件事故によって生じた被害者の損害を賠償する責任がある。

三  損害

(一)  治療費 二五六万六六八〇円

《証拠省略》によると、請求原因3の(一)記載の事実が認められる。

(二)  休業損害 一三二万〇四九四円

《証拠省略》によると、請求原因3の(二)記載の事実が認められる。

(三)  損害の填補

《証拠省略》によると、請求原因3の(三)記載の事実が認められる。

四  損害補償

(一)  療養補償

《証拠省略》によると、請求原因4の(一)記載の事実が認められる。

そうすると、原告は、国家公務員災害補償法六条一項により、右給付額一七六万六六八〇円の限度で被害者の被告に対する損害賠償請求権を取得したものと認められる。

(二)  給与補償

《証拠省略》によると、請求原因4の(二)記載の事実が認められる。

そうすると、原告は、民法四二二条の類推適用により、右給付額一三二万〇四九四円の限度で被害者の被告に対する損害賠償請求権を取得したものと認められる。

五  抗弁

1  被害者が昭和四五年七月一六日第一事故に遭遇したこと、本件事故による被害車両の修理費が二万一六六〇円であったことは、当事者間に争いがなく、《証拠省略》によると、被害者は、第一事故により頭部・腰仙部打撲傷の傷害を負い、事故当日の昭和四五年七月一六日から同年九月九日まで福岡逓信病院に入院し、翌一〇日から昭和四六年二月二八日まで前記松田整形外科医院に入院し、その後同医院に通院し、同年七月八日から同年一〇月九日まで同医院に再び入院し、その後同医院に通院し、昭和四七年三月一七日からは断続的勤務に、同年一〇月一日からは平常勤務にそれぞれ服しながらなお毎日のように通院を継続中、本件事故に遭遇したこと、当時の症状としては、頸椎、左肩及び腰に痛みが残っており、主治医の診断によると、「いつ固定にしようか、いつ打切ることにしようかという時期」にきており、後遺症として等級一四級九号の神経症状が残るものと予想されていたところ、本件事故による衝撃により、昭和四六年二月ころの症状に逆戻りし、前記のような治療経過を経て、昭和五〇年九月二〇日ころ等級一四級九号の神経症状を残して治ゆしたこと、第一事故は、被害者が自転車で公務に従事中自動車に衝突されたものであり、一時意識を喪失するほどの事故であったが、本件事故は、比較的軽微であり、第一事故による傷害がなければ、これほど重大な結果を生じなかったものと推測されること、なお、本訴請求分以外の本件事故による損害については、昭和五三年一月二六日、被告との間で金五〇万円をもって裁判上の和解が成立しており、その後間もなく、第一事故による損害についても、治療費及び休業損害を除くその余の損害に関し加害者との間で金八〇万円をもって裁判上の和解が成立したことが認められる。

2  以上のとおりであって、被害者は、本件事故当時、第一事故による傷害の治療継続中であり、間もなく後遺症を残して治ゆするはずのところ、本件事故に遭遇し、その衝撃が比較的軽微であったにもかかわらず、同じ部位に相当の重傷を負ったものであって、本件事故による損害の発生について、第一事故による傷害の存在が寄与していることは、否定しうべきもない。

ところで、第一の交通事故に続いてさらに第二の交通事故に遭遇した者が、第一事故による傷害のため、通常生ずべき損害よりさらに重大な損害を受けるに至ったときは、損害賠償の指導理念である公平の原則に照し、その増大した損害について、右傷害による影響を斟酌し、それが寄与する程度に応じて損害を減額するのが相当であるところ、本件においては、第二事故の衝撃が比較的軽微であった反面、第一事故と第二事故との間に四年余の隔があることその他の諸事情に鑑み、被害者に生じた損害のうち三〇パーセントを減額し、残余の七〇パーセント、すなわち、前記損害額合計三〇八万七一七四円のうち金二一六万一〇二二円(円未満四捨五入)を本件事故の加害者たる被告に負担させるのが相当と考える。

六  結論

以上の理由により、被告は原告に対し、損害賠償金二一六万一〇二一円及び別紙債権目録中「認容額」欄記載の各内金に対する「支払年月日」欄記載の各支払日の翌日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告の本訴請求は、右の限度で理由があるから認容し、その余は失当であるからこれを棄却する。

よって、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小長光馨一)

<以下省略>

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